第121章 彼女はやはり彼を失望させなかった

「すみません、こちらは楽屋のメイクルームですので――」

メイク担当が言い終える前に、少女がさらりと口を挟んだ。

「その人、私に用があるの。大丈夫、入れてあげて」

メイク担当はそこで言葉を飲み込み、男をもう数度だけ値踏みするように見てから、足早に去っていく。

「橘さん、何かあればいつでもお呼びください」

橘結衣は顔を向け、好奇心を隠さずに男を見上げた。

「宮本景太? わざわざここまで来て、どうしたの?」

「来ちゃいけないのか?」

宮本景太の黒い瞳が、じっと彼女を捉える。謎めいた仮面の奥で見えるのは、彼女の目だけ。

星みたいに澄んだ眼差し。現実離れした美しさだった。

「えっと...

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